巣立ちに向けて・・・

 「ママは門まででいい!」
 お母さんと一緒に登園してきた4歳児のAちゃんが珍しく大きな声で言いました。
 登園時、いつもは保育室までお母さんについてきてもらうのに、今日は正門を入ったところで付き添いを断るとは・・・。正門で交通整理をしていた私も正直びっくりしました。
 登園に前向きになれず、親との別れを泣いて拒む姿は悩ましいところですが、逆の姿もお母さんとしては戸惑われるのではないでしょうか。もしかすると、あっさりしすぎていて、ちょっと寂しさも感じられるかもしれませんね。
 でも、Aちゃんがお母さんの付き添いを強く断ったのには理由がありました。
 実は、正門に到着する間、クラスメートのBちゃんと出会い、一緒にお部屋まで自分たちだけで行きたかったのです。
 ちなみに、Bちゃんは登園時、お母さんに抱っこされたまま、お部屋に向かうことも多かったお子さんです。そのBちゃんもAちゃんとお部屋に行くことを望み、お母さんをふり返ることなく、意気揚々とAちゃんと手をつないで部屋に向かっていきました。その姿に、Bちゃんのお母さんもとても驚いていました。
 二人はその後も仲良く遊び、帰りの会では隣同士でイスに座っていました。もちろん、これからも山あり谷ありでしょう。でも、確実に親から巣立ち、子ども同士の世界に喜びや楽しさを見つけているようです。
 幼児教育の世界では、子どもが親からどう離れ、自立していくかがしばしば課題になりますが、それ以上に親がわが子から上手に離れる方が大切なのかもしれません。まさに「親離れ」よりも「子離れ」が大切になるということでしょう。AちゃんとBちゃんの姿から、改めて、そんなことを考えさせられました。
2024年06月14日