初めての「イヤ!」

 入園してから10日目、3歳児のAちゃんが大きな声で「イヤ!」というのを聞きました。どうやら、お部屋のぬいぐるみを庭に持ち出し、遊ぼうとしていたところ、先生から「汚れてもいけないから、お部屋で遊ぼうか・・・」と言われたことが嫌だったようです。
 「Aちゃんが初めて“イヤ”って言ったんじゃない?」
 担任に確かめると、確かにその通り、とのこと。
 思えば、Aちゃんは入園直後から、ほかの3歳児が泣いている姿をよそに、とてもスムーズに園生活を進めていました。それだけに「イヤ!」はビックリしました。でも、Aちゃんも同じ3歳児。まだまだ、自分の思いを通したいことも多いはずです。それが10日目で、ようやく表現できたと言えるでしょう。
 「もしかすると、これから、こんな姿が増えるかもね」
 そんなことを担任と確かめながら翌日を迎えると、今度は、初めて親御さんと別れることを嫌がる姿が見られました。
 「今まで我慢していた」というよりも、Aちゃんなりに「頑張っていた」のでしょう。3歳児としては、まわりがよく見えるお子さんですから、状況に応じたふるまいを心がけていた、と言えるかもしれません。こうした姿は、大いに認めてあげるべきだと思います。
 ただ、これからは「我を張る」、つまり「自我の芽生えに基づく自己主張」も大いにしてくれることでしょう。本当に楽しみです。
 ちなみに、入園時、落ち着いていたお子さんが、4月下旬頃から不安を見せる姿は意外に多いもの。アカデミックな概念ではありませんが、保育現場では「五月泣き」という言葉も使われてきました。要は、5月期になってから、急に不安定さを見せる姿を指すわけです。ゴールデンウィークや夏休み明けなど、長期の休みを終えた時期にもしばしば見られる姿です。
 「どうして今頃泣くの・・・」
 「なぜ、急にわがままになってるの・・・」
 戸惑われる親御さんも多いと思います。しかし、これも幼い子ども時代にしばしば見られる姿なのです。
 「子どもの成長は一本道ではなく、ジグザク、また、行ったり来たりなのだ!」
 そんなふうに、お子さんを見てあげると、焦る気持ちも少し緩和されるかもしれませんね。心がけてみてください。
2023年04月22日